繰り返し触れる柔らかい唇。
それは遠い昔に触れた感触と何ら変わりなくて、
アレンは思わず目頭を熱くする。


積極的に神田の身体にしがみつくと、おもむろにその唇を啄ばむ。
片腕で必死に抱きついてくる小さな身体の感触が、
神田には何とも言えず心地良かった。
その身体を思い切り抱き寄せ、
アレンの頭を抱え込んでは、貪るようにキスを繰り返す。



「……ふっ……ん……っ……」



アレンの柔らかい唇から漏れ出す甘い吐息は、
まるで秘密の花園で見つけた蜜の如く味わう者を魅了する。
一度知ってしまったら、もう止められはしない。


溢れ出す切ない感情は一体何なのか。
それは、愛し合う者と離れ離れにならなければならなかった苦しさと
再び巡りあえた嬉しさ。
自分の中に、こんなにも熱い感情が潜んでいることなど
全く想像もしていなかった。


感情の赴くまま、神田は激しくアレンを求めた。
息つく間もなく舌を絡ませ、逃げようとすると追い立てられるようにまた絡め取る。
どちらのものとも知れない唾液が、飲み込めずに口元からだらしなく零れ落ちた。


神田の腕の中で、アレンは瞳を潤ませ頬を上気さる。
その唇は長い口付けの余韻で紅く色付いていた。


それまで見たことのない艶っぽい表情に、
神田の鼓動は一気に加速を始め、沸き起こる激しい衝動に大きく咽喉を鳴らす。



「ねぇ……ボクのこと全部思い出した?
 なら、キスよりもっと……もっと先まで……してくれますか?」
「そんなに俺に抱かれたいか?」
「……ええ……とても。だからお願い、抱いてください……」



幼いその身体から、何ともいえない芳しい香りがして、神田は思わず目を細める。
そして、潤んだ瞳で見つめるアレンをそのまま強く抱きしめた。


身体の奥がざわついて治まらない。
この状況で抱くなという方が無理というものだ。
出来れば傷ついたアレンの身体に負担を強いることはしたくなかったが、
内側から沸き起こる激しい欲情を抑える事など、神田には不可能だった。


頭の上で一つに束ねていた髪を片手で解くと、
しなやかな黒髪がふさりと落ち、ふたりの顔を覆い隠すカーテンのように視界を塞ぐ。
アレンの頬に髪が触れると、柔らかい石鹸の香りに混じり、麝香の香りが鼻を擽った。



「キミの香りだ……僕の大好きな、キミの香り……」
 


擽ったそうな、それでいて幸せそうな笑みを零し、
アレンはその髪を一房手に取ると自分の口元へ運ぶ。
そしてゆっくりと黒髪に口付けた。



「髪なんかにキスしてんじゃねよぇ……するなら、こっちだろ?」



そう呟きながらアレンの顎をぐいと持ち上げると、
薄く開いた艶やかな唇に、さっきよりも一層激しい口付けを繰り返す。


何度も神田の唇に吸われ、口内を蹂躙されるうち、
すでにアレンの唇はぷっくりと赤く腫れ上がり、
飲み込めない唾液が首筋を伝っては、鎖骨の窪みへ小さな水溜りを作っていた。



「……ふっ……はぁっっ……!」



逃げ腰な舌を促すようにつつくと、
アレンは神田の舌に己のそれを恐る恐る絡めつかせる。
少し汗ばんだ白い肌は、神田の掌を逃さないように、
その柔らかさを増しているかのようだ。
 

神田はアレンの上に覆いかぶさり、ようやく唇を開放したかと思うと、
今度は首筋、そして耳元へと己の唇を少しずつずらしていった。
耳朶を甘く噛み、その中へと舌を這わせると、
アレンは堪らないといった様子でくぐもった嬌声をあげる。



「相変わらず感じやすいな……」



汗ばんだ肌に掌を当て、無残にもぎ取られた腕の付け根にキスをする。



「やっ、止めてください!……みっともない……から……」
「何故だ?みてくれがどうだろうと、俺はお前の全てが好きだぜ?
 今は霧と化している腕も、この瞳も、お前の物なら全部まとめて愛してやれる。
 見た目が変わろうと何だろうと、お前はお前だ。
 覚えとけ。何処にいたって、俺はこうしてお前を捕まえてやる……」
「神田……」



今も昔も変らない。
神田はこんなダメな自分を、心から愛してくれている……。


アレンの頬を一筋の涙が伝った。



「相変わらず泣き虫だな……」
 


そう。神田はこの涙が苦手だ。
気持ちが真っ直ぐだから、むこうみずで後先考えない。
頑固なくせに、自分の些細な態度に傷ついてすぐに泣くのだ。



「まぁ……俺の腕の中で啼くお前は好きだがな……」
「……なっ……」



腕の中で真っ赤になるアレンに、神田は再び唇を落とた。
しなやかな肢体も、感じやすい肌も何もかも全てが愛しい。



「……やっと……会えた……」



神田の呟きはアレンの心を熱くした。
それはアレンも同じだったから。



「僕も……会えて嬉しいです……
 ホントに……本当に……会いたかった……」



激しくて熱い抱擁。
神田は執拗にアレンの舌を追い詰めては己の舌を絡ませる。
二人の吐息と交じり合う水音が、その切羽詰った感情を浮き彫りにしていた。



「んっ……はぁっ……」
「……ア……レン……っ」



耳元で囁かれた己の名前に、アレンは背筋が震える。
いつもモヤシとしか呼ばない神田。
いつしかそう呼ばれる事に慣れてしまっていた。
以前愛し合っていた時に呼ばれた名前で、
再びこうして呼んでもらえることが、堪らなく嬉しい。



「……んっ……ユウ……」



アレンがその名前を呼んだ途端、首筋にキスを落としていた神田の耳がピクリと動く。
本来ならばファーストネームを呼ばれる事を神経質なほど嫌がる彼だ。
だがその彼が、アレンの瞳を覗き込んで綺麗に微笑んだのだ。
怒鳴られないことを驚くべきなのか、それとも神田が嬉しそうに微笑んだ事を驚くべきなのか、
アレンは不思議そうな顔をする。 



「……なんだ?」
「……だって……怒らないん……ですか?」
「ばぁか……んなことで怒るかよ?」
「けど、ユウって呼ばれたら……
 ……いつも凄い剣幕で怒るじゃないですか?」



神田はアレンの台詞に恥ずかしそうに顔を赤らめる。



「そりゃ、この世でその名前を呼んでいいのは……お前だけだからな」



神田の思いがけない告白に、アレンは今にも憤死しそうなほど真っ赤な顔をする。



「そっ、そんなこと、今言うなんて……ズルイですよ……」
「だがな……俺をその名で呼ぶのは、ベッドの中でだけにしろよ?」
「勿論ですっ!
 だって……僕以外の人がこの名前でキミを呼ぶのは、僕も嫌ですから……」



舌を噛みそうな甘い台詞に気付いたのか、
二人はくすりと笑いながら再び口付けを交し合う。


薄い胸の飾りに神田の手が触れ、軽く弄ばれるだけで、
アレンはくぐもった嬌声を上げた。
深い霧に覆われながら、薄暗い部屋の灯りに映し出されるアレンの肌の上を
ゆっくりと神田の唇が辿っていく。
首筋に、胸元に、そして脇腹へと、神田は念入りに口付けを繰り返し紅い徴を落とした。
それは長い間触れることが出来なかったアレンへの執着……。


ちくりとするその甘い痛みが、アレンの気持ちをより一層昂ぶらせた。



「ふっ……うっん……あぁんっっ……!」



下着がゆっくりと下ろされ、脚から抜き去られると、
神田は柔らかいその内腿に同じような痕を付けた。
その唇の感触で、アレンの中の熱は中央部へと集中する。


神田のすぐ目の前に己の羞恥を晒しているようで居た堪れない感覚が、
かえって興奮を煽り、アレンの中心部を容易く持ち上げた。
先端から堪えきれない蜜を零す部分を、
神田は手でやんわりと包み、ゆっくりと上下に動かしてみせる。



「凄い……もう辛そうだな……」
「そ……んなっ……!」



恥ずかしげに両手で顔を覆うアレンの物を、
神田は何の躊躇いもなく口に含んではゆっくりと舌を這わせた。
口に含んだだけで、アレンのそこはさらにはち切れそうに膨れ上がる。



「やっ……あっ……あぁっ……!」



生暖かい神田の口の中は、
それだけでアレン欲望を刺激するには充分過ぎるものだった。
アレンはあっという間にその熱い飛沫を神田の口の中で弾けさせる。



「うっ……ご、ごめんなさ……いっ……」



何度されても神田の綺麗な口に自分の欲望を吐き出すことは恥ずかしい。
だが当の神田は不敵な笑みを浮かべ、満足げにその口元を拭ってみせる。



「間違いない……お前の味だ……」
「……なっ……!」



恥ずかしさで顔から火が出そうだ。
そんなアレンの気持ちなどお構いなしに、神田は先へと手を進める。



「ちょ、ちょっと待ってください!」
「……なんだ……?」
 


アレンは怪訝そうな顔をする神田の腕にしがみ付くと、体勢を変えて抱きついた。
そして徐にそのジッパーを下げ、頭を擡げた神田自身に手を添える。



「……何をするつもりだ?」
「僕にもキミを……ちゃんと……味合わせて下さい……」



一瞬驚いて眼を見開いた神田だったが、
アレンの縋るような瞳に絆されて、好きにさせてみることにする。


久し振りに目にする神田自身は、自分のものとは比べ物にならないほど大きかった。
前から大きいとは思っていたが、
サイズだけで言えば、前世よりもワンサイズ増しているような気がする。
こんな代物を自分の中に受け入れるのだと思うと、
僅かに躊躇してしまう。


だがその反面、以前はこれが身体の中に入り込み、
まるで自分が自分でなくなってしまうほど愛されたことを思い出す。
すると、生まれ変わってからはまだ一度も神田を受け入れたことのない場所が
不思議とじんと熱く火照った。



「あの……前より大きくなってませんか?……ここ……」
「……あぁ……?」



神田は怪訝そうに片方の眉を吊り上げる。



「んなこと知るか。それより……無理しなくていいんだぞ?」
「無理だなんて。僕がそうしたくてするんです」
「……くっ……」



アレンはゆっくりと神田のものを口に含むと、舌を絡ませる。
口にさえ余る圧倒的な存在に途惑いながらも、
アレンは咽喉の奥までそれを咥え込んで、絶妙な具合で吸啜を繰り返した。



「きもち……いい……ですか……?」
「……あ……ぁ……とってもな……」



己の口の中で容量を増し、
言葉の通り気持ち良さそうに口元を緩める神田の顔があまりに艶っぽく、
アレンは逆にゴクリと咽喉を鳴らしてしまう。


いつも思っていた。
この人は自分なんかが触れてはいけないほど、
綺麗で精練で艶かしい程の色香を持った人なのだと。
 

その神田が、今、自分の行為に溺れてうっとりとした表情をしてくれている。
再度その行為を続けようと口を近づけた瞬間、
アレンは神田に頭を持ち上げられ、今度はストンとその身体を持ち上げられた。



「どの口が……こんな悪さをする?」
「……んっ……!?」



膝の上に抱きかかえられるような形で唇を貪られる。
そして露わになった双弓を手で押し開かれると、
神田はその中に隠れている蕾を指で少しずつ解し出した。



「やっ……はぁんっ……」



久し振りに触れられた蕾は突然の刺激にその入り口をひくつかせる。
神田の指が入り口付近を押し開くように撫でまわすと、
アレンは溜まらずに背を仰け反らせた。



「ここは相変わらず、俺を欲しがってるな……」



熱っぽい声が耳元を掠めると、その吐息に身震いがする。



「それに……耳も弱いんだけっけな?」
 


わざと低く囁いて耳に息を吹きかけると、
明からさまに舌を差しこみ耳の中をしゃぶってみせた。
脳みそに直接染み込むような熱い感覚に眩暈がする。



「あっ……やぁっ……!」



さっき一度果てたばかりの中心部が既に頭を擡げだし、
先走りの液が伝って臀部を濡らす。
神田の指の刺激と合い間って、アレンの蕾はくちゅくちゅと卑猥な音を奏で出した。


アレンの腹部に当たる神田自身もはちきれんばかりに勢いを増していて、
神田も限界が近い事を伝える。



「傷付けたくねぇからな……少し……力ぬいてろ……」
「……え……?」



そう言われた次の瞬間、
アレンは自分の後吼に神田の熱い塊が差し込まれるのを感じる。


覚悟はしていたものの、やはりその存在感は圧倒的で、
押し開かれる苦痛に自然と涙が浮かび上がる。



「くっ……うぅっ……」



さっき自分が口に含んだせいで、神田自身にも滑らかさが増していた。
お陰で思ったよりも痛みを伴わずに一つに繋がる事が出来たようだった。
気が抜けた瞬間、今度は自分の体重の重みで、
より一層深くまで神田の物が入り込む。



「あっ……ああっ!」



勢いで最奥を突かれた快感と、
少し盛り上がった絶好の場所を擦られた感覚とで、
アレンは嬌声を上げて神田の首にしがみ付いた。



「痛いか?」
「ちょ……ちょっと……だけ……」
「動くのはまだムリだな。このままじっとしてるか?」



それを自分に聞くのは卑怯と言うものだ。
アレンは少し恨めしげに神田を睨みつける。



「それは……や……です……」
「じゃあ、俺にしっかり捕まっておけ……」



言うが早いか、神田はゆっくりとその腰を動かしだした。



「……はっ……あんっ……!」



全身を貫いて頭の先まで痺れるような快感が体中を駆け抜ける。
アレンは大きく胸を喘がせた。

 
下半身がまるで己のものでないように、熱を持ってじんじんと痺れている。
腕を回した神田の髪の香りが鼻を擽り、何ともいえない快楽に媚薬を加える。
ぐいぐいと身体の奥底を突き抜かれ、感じる部分を何度も擦られる。
 

あまりの快感に口元が緩み、そこから淫らに唾液が滴り落ちるのさえ気付かないほどに、
アレンはその快楽に陶酔していた。
魂ごと持っていかれそうな激しい快楽。未知の快楽に自然と全身の力が抜ける。



「はぁっ……ああんっ……! ユウっ、ユウっ!」



何度も神田の名前を呼び、背中を仰け反らせる。
アレンは天井を仰いで全身で酸素を求めた。
そして体内の神田を思い切り締め付けた。


既に神田もその中で痛いほどに張り詰めている。
アレンを揺さぶるたびに、湿った吐息が胸元を掠め、
それだけでユウも感じてくれているのだとアレンは嬉しくなった。



「……アレ……ンっ……!」



神田の頭の中で白い光が弾けた。
どくんと大きく脈打つモノがアレンの中に白い飛沫を解き放つと、
より奥の深いところまで届けとばかりに神田はその細い腰を己の方へと引き寄せる。



その眩暈がするほどの圧迫感に、
アレンも一気に嬌声を上げて昇リつめたのだった……。








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≪あとがき≫

ようやく心も身体も結ばれた二人です〜(#^-^#)
エッチシーンって、何かと表現がワンパターンになりがちで難しい;
あまりグロいのは嫌!……って言う方も多いと思うので、
未だ少し抑え目です:*:・( ̄∀ ̄)・:*:
今まで18Rにしてたけど、
これからは「成人向け」って表示にしなくちゃいけないんですね?!( ̄口 ̄)
うわぁ〜〜世の中シビアだなぁ〜〜〜;
……なので、期間限定で、こちらも裏部屋へ隠します。
裏への入り口をご存じない方は、早めに読むことをお勧めいたしますvv


さてさて、物語はいよいよラスト間近です。
またまた、続きを楽しみにしていらしてくださいませ〜〜〜(=^▽^=)





                                  
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〜天使たちの紡ぐ夢〜   Act.17

慣れ親しんだ香り。
懐かしい温もり。
肌を通して感じる全てのものが
狂おしく……愛しい……。